コラム
日本の食文化を語るうえで、出汁の存在を軽視するわけにはいきません。出汁とはどういうもので、どのような歴史を経て生まれたのでしょうか?ここではさらに、出汁をとることができる素材の、鰹節、煮干し、あご、ビーフジャーキーについても触れておきましょう。
出汁とは料理に旨味を加えるために、いろいろな食材を煮てとった汁のことで、料理の味のベースになるものです。
広い意味での出汁は世界各地に見られますが、日本料理では昆布や鰹節などの乾物を使うことで、旨味のみを効率的に抽出できるのが特徴です。
意外にも出汁の始まりは非常に古く、最古のものでは縄文時代に、土器の中に貝などを入れて煮込んでいたことが確認されています。その後室町時代になると、昆布出汁が京都の寺院などで用いられるようになりました。
さらに江戸時代に入り庶民の食文化が栄えると、鰹節や煮干しを使った出汁が一般的に使用されるようになりました。そして、京都と江戸の文化が出会うことで、鰹節と昆布の両方を使った「あわせ出汁」が生み出されました。
その他にも椎茸や、「あご」と呼ばれるトビウオなども出汁として使用され始めますが、いずれも江戸時代までに出汁のとり方が確立しています。
鰹節は一般的には仕上げ節、削り節のことを指します。家庭で便利な出汁パックや顆粒出汁も使われますが、こちらは調味がしやすいように食塩などの調味料が配合されています。
鰹節を使って作られる鰹出汁は、和食出汁のベースとして用いられており、吸い物や味噌汁、茶碗蒸しなどの和食には無くてはならないものです。
鰹出汁は豊かで爽やかな風味と香りを特徴としています。鰹出汁の主成分はイノシン酸です。イノシン酸は疲労回復に効果があり、ビタミンB1、B12やミネラルを豊富に含んでいます。
出汁のとり方は鍋に水を入れて加熱し、60℃~85℃になったら火を止めて鰹節30gを入れて1~2分置きます。鰹節が鍋底に沈むのが目安です。その後ザルに布かキッチンペーパーを置いて濾します。絞るとえぐみが出てしまうので絞らないのが基本です。
煮干し出汁とは、煮て干した小魚からとった出汁です。煮干しはカタクチイワシが一般的ですが、その他に真イワシやウルメイワシなど多種類のイワシ、アジ、サバなど異なる魚を使った煮干しもあります。
煮干しを用いた出汁は魚の味が強く、味噌との相性が抜群です。煮干しには旨味成分のイノシン酸とグルタミン酸が含まれており、味噌汁をはじめうどん、鍋などさまざまな料理に使うことができます。煮干しにはカルシウムやビタミンD、鉄分など、女性に必要な栄養素も豊富に含まれています。
煮干し出汁をとるには、まず、魚独特の臭みを取るために煮干しの頭とはらわたを除去します。水l?につき2?30gの煮干しを入れて半日以上置き、煮出します。時間がない場合は30分のつけ置きでもかまいません。アクは丁寧に取り除き、アクが出なくなったら煮干し出汁の完成です。
出汁に使うあごとは、トビウオのことを指します。煮干しや鰹節に比べ、上品な味とコクが特徴となっています。
出汁の中では高級品ですが、青臭さが少ないため、どのような料理とも好相性です。特にうどんやおでんなどの汁物料理に使うと、あご出汁の味を存分に楽しめます。
あご出汁をとる際は、あごをしばらく水に浸しておいてから弱火にかけ、湯気が出て沸騰する前に火を止めて、しばらくそのまま放置してから、あごを取り出して下さい。
出汁は80℃以上になると、臭みやえぐみが出てくるので気をつけましょう。とったあご出汁は、冷蔵庫に入れておけば4~5日(夏場は2~3日)は持ちます。小分けにして冷凍すれば、さらに長い期間保存可能です。
あご出汁をとる時間がない方は、粉末あご出汁や液体あご出汁、あご出汁パックなどがすぐに使えて便利です。
ビーフジャーキーは赤身肉を使った栄養分のギュッと詰まった食品です。食べ方と言えば、おやつ、酒のおつまみ、補食などが一般的ですがサラダのトッピング、煮込み料理など、普通の料理の素材としても使われています。
テングビーフステーキジャーキーは牛肉を原料とし、味付けのベースに醤油が使われています。ということは料理の出汁としても十分使えます。
実際に鍋に水を入れ、ビーフジャーキーを入れてグツグツ煮ると、お湯の色は黄金色に変わっていきます。詰まっていたスパイシーな旨味や栄養分が出汁として出てきているのです。肉の香りがして、しっかりとした味が特徴です。
これを応用すると美味しいスープが味わえます。鍋に水とコンソメ一つと塩コショウを少し入れ、それに適当な大きさにに切ったビーフジャーキーを入れます。さらにお好みの野菜を入れて中火で約5分煮込めば完成です。ビーフジャーキーがコンソメスープの隠し味となり、ワンランク上の美味しいスープがいただけます。
出汁とは料理に旨味を加えるもので、日本料理の味のベースになります。その歴史は縄文時代にさかのぼります。出汁をとる素材の代表格が鰹節です。和食には無くてはならない存在で、爽やかな風味と香りが特徴です。
煮干しもよく出汁として使われます。こちらは魚の味を強く出せ、味噌との相性が抜群です。あご(トビウオ)は出汁の素材の中では高級品で、どのような料理にも合います。
最近、おやつ、おつまみ、補食として人気のあるビーフジャーキーが出汁をとる素材として人気となっています。醤油ベースで赤身肉の旨味がギュッと詰まったビーフジャーキーからとる出汁は衝撃の旨味があります。まだ未体験の方は、まずは簡単なスープから挑戦してみてはいかがでしょうか。